税金の行方を追う|第2回
調査基準日:2026年10月15日
福岡県の2026年度9月補正予算には、高校教育改革のための基金積立金として、64億8,000万円が計上されました。この予算を含む一般会計補正予算(第3号)は、10月1日に県議会で原案可決されています。
福岡県議会「令和8年9月定例会の採決結果」https://www.gikai.pref.fukuoka.lg.jp/site/honkaigi/saiketsu-0809.html
ただし、64億8,000万円は、学校の工事や機器の購入にすでに支払われた金額ではありません。県の予算資料、国の採択資料、基金の運営ルールを照合し、「計画されていること」と「実際の支出として確認すべきこと」を分けて整理します。
1.県が示した計画は4校。対象期間は2026~2028年度
県は、2026年度から2028年度にかけて高校教育改革の拠点を整備する計画です。64億8,000万円の内訳として、次の4校を示しています。福岡県庁ホームページ
| 県の計画に掲載された拠点校 | 基金積立額の計画内訳 |
|---|---|
| 八女農業高校 | 17億円 |
| 小倉工業高校 | 19億5,000万円 |
| 宗像高校 | 17億7,000万円 |
| 博多青松高校 | 10億6,000万円 |
| 合計 | 64億8,000万円 |
出典:福岡県「令和8年度9月補正予算の概要」3頁。福岡県庁ホームページ
この表は県の予算計画の内訳であり、各校への送金実績や、工事業者への支払い実績を示したものではありません。国の採択資料との照合結果は、後の「4」で説明します。
2.今年度の追加事業費は2億7,293万6,000円
基金への積立とは別の予算項目に、2026年度の「高等学校等教育改革推進費」があります。9月補正で追加された額は、2億7,293万6,000円です。
| 事業の対象 | 9月補正で追加された事業費 |
|---|---|
| 八女農業高校 | 5,800万4,000円 |
| 小倉工業高校 | 2,974万9,000円 |
| 宗像高校 | 1億48万円 |
| 博多青松高校をはじめとする定時制・通信制高校 | 8,470万3,000円 |
| 合計 | 2億7,293万6,000円 |
いずれも今回の補正による追加額です。年度全体の予算額でも、支払い済みの金額でもありません。また、最後の項目は博多青松高校だけに使う費用とは限りません。福岡県庁ホームページ
八女農業高校では、スマート農業を学ぶ環境を整える計画です。 製茶・抹茶工場の増築などに向けた設計、自走式草刈機やドローンなどの導入が予定されています。
小倉工業高校では、ものづくりとデジタル技術を組み合わせた教育を進める計画です。 「アドバンスセンター」の新築や実習棟の改修に向けた設計、企業と連携した教員研修などが計上されています。福岡県庁ホームページ
宗像高校では、大学や企業と連携する探究学習を充実させる計画です。 学習プログラムの開発や、デジタルホワイトボードの整備に向けた設計などを行います。
博多青松高校では、遠隔授業を通じて他校の生徒にも学びを届ける計画です。 単位制の定時制高校の生徒が同時に受講できる環境の整備や、パソコン実習室・個別指導室などの設計が予定されています。福岡県庁ホームページ
「設計費が計上された」ことと、「建物が完成して授業で使われている」ことは別です。 本記事では、これらを実施・完成済みの事業として扱っていません。
3.64億円と2億円を、別々のお金として足してはいけない
基金は、複数年度にわたる事業の財源を確保し、必要に応じて取り崩して使う仕組みです。今回の64億8,000万円の基金積立は、同額の国の補助金を財源として予算に計上されています。福岡県庁ホームページ
予算上の流れは「国の補助金 → 県の基金 → 必要に応じて事業費へ → 施設・機器・教育活動」です。 これは仕組みを示したもので、すべての入金・支払いが完了したという意味ではありません。
今年度の追加事業費2億7,293万6,000円の財源は、大部分に当たる2億7,290万4,000円が基金からの繰入金で、残り3万2,000円が諸収入です。福岡県庁ホームページ
予算書上では「基金への積立」と「基金を使った事業費」がそれぞれ歳出に計上されます。しかし、その合計を学校現場に使う独立した財源と考えると、同じ資金の移動を重ねて数えてしまいます。
税金ウオッチ福岡県では、基金に入れる金額と、基金から取り出して実際に支払う金額を分けて追跡します。
4.県の4校計画と、国の採択資料で確認できた2校を区別する
県の予算資料には4校が掲載されています。一方、今回確認した文部科学省の**2026年9月15日公表の採択結果一覧(追加公募第1回申請期限まで)**で、福岡県の採択校として確認できたのは、八女農業高校と宗像高校の2校でした。
小倉工業高校と博多青松高校は、この一覧では採択を確認できませんでした。ただし、これだけで不採択や支援の中止と判断することはできません。県の予算計画と国の手続きがどう対応するかは、追加確認が必要です。
したがって本記事では、「県が4校分の予算を計画していること」と「今回参照した国の資料で2校の採択を確認できたこと」を分けて記載しています。4校すべてについて、国の交付決定や入金まで確認できたという意味ではありません。
文部科学省「採択結果一覧(2026年9月15日)」https://www.mext.go.jp/content/20260915-mxt_kouhou02-000049080_01.pdf
5.整備する学校以外に、学びが広がるか
文部科学省の同じ資料には協力校も掲載されています。例えば、八女農業高校の計画には八女工業高校や福岡農業高校など、宗像高校の計画には八幡高校や福岡中央高校などが挙げられています。これは計画上の連携先であり、すでに利用が始まったことを示すものではありません。文部科学省ホームページ
そのため、本サイトでは「設備が何台入ったか」だけでなく、**「何人の生徒が何時間使ったか」「協力校の生徒も利用できたか」「基金事業が終わった後の維持費をどう確保するか」**を検証の観点とします。
これらは本サイトが提案する確認項目で、県が公表した正式な成果指標を引用したものではありません。
6.実際の支出と成果は、これから何で確かめるか
今回参照した予算資料と採択資料だけでは、4校全体の国の交付決定額、契約先・契約金額、実際の支払額、施設や機器の利用実績までは確定できません。
ただし、実績を確認する制度上の節目はあります。文部科学省の基金管理運営要領では、都道府県に対し、毎年度の事業実施状況を翌年度6月10日までに国へ報告し、公表することを求めています。
2026年度分の国への報告期限は、2027年6月10日です。県のウェブサイトで必ずその日に公開されると確認したものではありません。文部科学省ホームページ
今後確認する資料は、国の交付決定、県の契約・支出資料、年度ごとの実施状況報告です。資料が公表された際は、当初の予算計画と実際の支出・利用を照合する必要があります。
予算が成立したこと、施設が完成したこと、生徒の学びが改善したことは、それぞれ別の段階です。
税金ウオッチ福岡県では、この違いを明確にして、税金の使い道と成果を確かめていきます。
調査方法:福岡県・福岡県議会・文部科学省の公表資料を照合。現地取材や担当部署への照会に基づく記事ではありません。